3-2. 変形(たわみ)

 梁・ラーメンなどに荷重がかかれば、当然ながら変形が生じます。部材の変形が予想以上になればそれに取りつく仕上げ材にクラックなどを引き起こし、大きな被害を生み出すことになりかねません。ここでは部材の変形を、梁のたわみを中心にした構造力学的視点から見ていきます。普段はたわみの理論的なことにまで踏み込んで考える必要はないと思いますが、基本的な概念を知っておくことに損はありませんし、このたわみの考え方がこの後解説する不静定構造物の解法に大きく関わってきますので、普段使用しているたわみの公式がどのようにしてできたのかを確認しておきたいと思います。公式を使用した実務的な計算は、鉄骨の梁・柱の項で取り上げていますのでそちらもあわせてご覧ください。

■たわみ・たわみ角
 図1・図2のような梁に荷重を掛けると、載荷後はそれぞれ図3・図4のようになります。このときの変位量をたわみ(δ)と言い、変形後の部材に対する接線の角度をたわみ角(θ)と言います。

単純梁 片持ち梁
単純梁 片持ち梁
単純梁の変形 片持ち梁の変形
単純梁の変形 片持ち梁の変形
表1 単純梁・片持ち梁の変形

 このたわみ・たわみ角を求めるには、モールの定理を用いた方法と積分を使用して求める方法(弾性曲線の微分方程式を立てる)があります。
 モールの定理とは、求めたい部材に対しM/EIという荷重を想定したときに、曲げモーメントがたわみと等しくなり、せん断力がたわみ角と等しくなるという定理です。

■モールの定理による解法
 モールの定理によるたわみの求め方を、順を追って見ていきましょう。
例1 図1のたわみ・たわみ角を求める。

例1図
ヤング係数:E
断面2次モーメント:I
図1
まず最初に曲げモーメントを求めます。
MmaxはPL/4となります。
曲げモーメント図
図2
この値を梁の曲げ剛性EIで割ったPL/4EIを仮想の荷重として曲げモーメント図の通りに掛けます。 仮想荷重
図3
左右の等変分布荷重をそれぞれ集中荷重に置き換えます。PL2/8EIの集中荷重を中央に置き換えるのは、最大モーメントを求めるときに正確な値が求まらないので、右図のように必ず2つの集中荷重にします。
集中荷重に置き換え
図4
仮想荷重のせん断力図はこのようになります。これがたわみ角となります。たわみ角の最大は支点部分であるX=0,X=Lで
式6 となります。
せん断力図(たわみ角)
図5
曲げモーメントの最大は梁中央部分となり、その値は
曲げモーメント式
となります。これがたわみとなります。
曲げモーメント図(たわみ)
図6

■弾性曲線式を立てる解法
 上記の関係を、積分を用いて考えてみましょう。任意の位置をxとしたときに、M/EIと、たわみ角(θ)・たわみ(δ)との関係は
たわみ角の基本式
たわみの基本式
となります。つまり、Mの式を立てて積分していけばいいのですが、問題は、積分をするたびに付いてくる積分定数(C)です。これを条件によって求める作業が伴います。ためしに例1の問題をこの方法で解いてみましょう。

例1図
図7

■ たわみ角θ
任意の位置Xのモーメントは、反力がP/2なので
  M=PX/2 (X≦1/2L)
となります。これを上記の式に照らし合わせると、
  式1
となります。これを積分すると、
  式2
となって、不明な積分定数Cが表れます。この時、荷重がかかっているX=L/2の部分でθ=0となることがわかっているので、XにL/2を代入すると、
  式3 よって、 式4
となり、定数が定まります。式をまとめると、Xの位置(x≦1/2L)におけるたわみ角は
  式5 となり、支点部分のたわみ角(X=0)は、
  たわみ角の式
■ たわみδ
たわみはM/EIの二重積分です。これは、たわみ角の式をもう一度積分することで求めることができます。
  式5
これを積分すると、
  式6
たわみは、支点部分(X=0)で0になるので、Xに0を代入して C=0が得られます。
  式7  (X≦L/2)
となり、これにたわみの最も大きくなるX=L/2を代入すると
  たわみの式


例2 次の片持ち梁のたわみ・たわみ角を求める

例2図
図8

 このような等分布荷重が掛かっている梁のたわみを求める場合、モールの定理ですとモーメントが2次曲線になるので、仮想荷重を掛けた後の計算が複雑になってしまいます。この場合は弾性曲線式による解法を使用するのが効率的です。
Xの位置における曲げモーメントは、
 M=−WX2/2
モーメントが上に出ますので、ここでは負号を付けておきます。
■ たわみ角θ
  たわみ角の基本式 ですので、 式1
たわみ角は、支点がフィックスですのでX=Lのときθ=0となり
  式2 よって、式3
たわみ角が最も大きくなるX=0では、
  たわみ角の式
反時計回り方向にたわむので、たわみ角がマイナスになります。
■ たわみδ
たわみ角の式を積分します。
  式4
  式5
たわみはX=Lのときδ=0ですので、XにLを代入すると
  式6  よって、 式7
たわみが最大になるX=0では
  たわみの式
代表的な梁のたわみ・たわみ角の式を表にしておきます。

最大たわみ角θ 最大たわみδ
単純梁−集中荷重 PL^2/16EI PL^3/48EI
単純梁−等分布荷重 WL^3/24EI 5WL^4/384EI
片持ち梁−集中荷重 -PL^2/2EI PL^3/3EI
片持ち梁−等分布荷重 -WL^3/6EI WL^4/8EI
表2 主な梁のたわみ・たわみ角

20120102

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建築構造online(旧「構造屋さん修行中」) author of this document かずぅ(kazuu)