3-1. 断面性能

 ここでは、部材の許容応力度計算などで使用される断面の性能計算について見てみましょう。
§1 断面1次モーメント
 断面1次モーメントとは、部材断面の図心を求めたりするときに使用します。この計算は、部材の計算で使用される頻度はそれほど高くありませんが、この考え方が、許容応力度計算とは全く別の、偏心率の時に出てくる剛心を求めるときに出てきますので、かなり重要といえます。
 断面1次モーメントは、断面の面積Aに、断面の図心から任意の軸までの距離を乗じて求められ、記号をSで表し、単位は長さの3乗となります。この時、同じ面積であっても図心までの距離が長いほど断面としての性能を高める計算になり、それがモーメントとほぼ同様と考えられることから、断面の(1次)モーメントという名称になっています。
 ・計算式
 X軸に対する断面1次モーメント
  Sx=A・y0 (cm3
 Y軸に対する断面1次モーメント
  Sy=A・x0 (cm3
では、早速計算してみましょう。

例1)次の断面の断面1次モーメントを求める
図1
図1

面積A=6×4=24 cm2
この図形の図心は、ちょうど中央になりますので、
 Sx=24×(2.5+2)=108 cm3
 Sy=24×(1+3)=96 cm3
となります。この計算では、長方形の図形1つだけだったので、計算に必要な図心は簡単に求まりましたが、複雑な図形の場合で図心がすぐに求められない場合は、図心が求まる形に分解して、個別に計算して最後に合計します。

例2)次の断面の断面1次モーメントを求める  図2
図2
 これは、不等辺山形鋼L-125×75×10です(図の単位はmm)。簡単にするため、先端のrは省略してあります。この断面1次モーメントを算出してみましょう。この場合、一度に図心を求めることができないので、図の破線のように2つに分けて考えます。
縦長の矩形の断面積をA1とすると
A1=12.5×1.0=12.5cm2
横長の矩形の断面積をA2とすると
A2=1.0×6.5=6.5cm2
全体の断面積A=A1+A2=19.0cm2
断面1次モーメントは、
Sx=12.5×6.25+6.5×0.5=81.38cm3
Sy=12.5×0.5+6.5×4.25=33.88cm3
となります。

ここから、この不等辺山形鋼の全体の図心(剛心)を求めることができます。全体の図心は、ただ単に個別に出した図心位置の距離を平均して求まるものではありません。この断面1次モーメントを求めることが必要なのです。図のように、Y軸から図心までの距離をx0、X軸から図心までの距離をy0とすると、
x0=Sy/A , y0=Sx/A
となります。これで計算すると、
x0=33.88/19.0=1.78cm
y0=81.38/19.0=4.28cm
となります。

§2 断面2次モーメント
 1つの部材に対し上から荷重がかかったとき、同じ断面積の部材であっても、断面が縦長になっているか横長になっているかで、部材のたわみ方は大きく異なります。
 断面2次モーメントは、そのような断面の形状によって変わる・たわみなど、変形しやすさの度合を数値的に表現したもので、記号はI、単位は長さの4乗で表されます。
 計算式は、ある図形に対し軸を定めた時、図形の微小断面daと軸までの距離(xまたはy)の2乗をかけたものが断面2次モーメントとなります。距離の2乗をかけるので、「2次モーメント」という名称になっています。式にすると以下のようになります。
 Ix=Σy2・da
 Iy=Σx2・da

 しかし、こんなことを書かれてもさっぱりわかりません。要は積分の計算になってくるのですが、実践でいちいち積分からやっていたら大変なので、いくつかの基本的な図形は公式化されています。

  断面形状 断面2次モーメント
長方形 長方形 Ix=bD^3/12
三角形 三角形 Ix=bD^3/36
円形 円形 Ix=πD^4/64
表1 主な断面の断面2次モーメント

 これらは、図心(剛心)に軸がある時の断面2次モーメントです(図中のG点が図心)、断面2次モーメントは、軸が図心を通るときが一番小さい数値となります。通常はこの公式だけで事足ります。

例3)次の断面の断面2次モーメントを求める(図中の単位はcm)

  例題2 解答
例3-1 例3-1 Ix=10×153/12
 =2812.5cm4
例3-2 例3-2 Ix=π×124/64
 =324π(≒1018)cm4
表2 例2の問題と解答

 軸が図心を通らない場合の計算は、図心を通るときの式を使用して、以下のようになります。
 Ix=Ix0+A・y2
  Ix:断面2次モーメント
  Ix0:軸が図心を通るときの断面2次モーメント
  A:断面積
  y:図心から軸までの距離

例4)次の断面の断面2次モーメントを求める(図中の単位はcm)

図3
図3 例4問題図

X軸が図心を通る場合の断面2次モーメントIx0は、
Ix0=12×203/12=8000cm4
これより、
Ix=Ix0+A・y2
 =8000+12×20×152
 =62000cm4

 複雑な断面の2次モーメントを求めるには、断面1次モーメントと同じように、いくつかの断面に分けて計算します。全体の断面2次モーメントから、欠損部分の断面2次モーメントを差し引くことも可能です。

例5)次のビルドHの断面2次モーメントを求める(図中の単位はcm)

図4
図4 例5問題図

 問題の前に「ビルドH」の説明をしておきます。ビルドHとは、大手鉄鋼メーカーが出荷している規格内のH形鋼ではなく、鉄骨加工工場でわざわざ製作するH形鋼のことです。いわゆる「オーダーメイド」のようなものです。規格にあるH形鋼は、鉄鋼メーカーから出ているカタログに各断面性能の数値は載っていますので、実務では計算で求めることはありません。ビルドHの場合、"BH-"と表記するのが一般的です。問題図のH形鋼は以下のように表記されます。
 BH-500×250×12×25 (梁成×梁幅×ウェブ厚×フランジ厚) 
(※ウェブは中央の縦の板、フランジは上下の横の板)
この複雑な断面を解くためには、図5のように長方形断面から欠損部分(斜線部)を引き算する方法が簡単です。フランジとウェブの3つの矩形に分けて最後に合計する方法もありますが、フランジの2次モーメントを算出するときに軸がフランジ図心を通っていないので、若干計算が複雑になります。
Ix=25×503/12−2×(11.9×453/12)=79685cm4

図5
図5


参考)ビルドHを3つの矩形に分けて計算した場合
Ix=1.2×453/12+2×(25×2.53/12+25×2.5×23.752)=79685cm4
となります。カッコ内の計算がフランジ1つ分の2次モーメントです。23.75という数値は、中心にある軸からフランジ図心までの距離です。

§3 断面係数
 部材内部の曲げ応力度を求めるときに使用するのが、断面係数です。記号はZ、単位は長さの3乗で表されます。計算方法は、図心を通る軸の断面2次モーメントIを求め、軸から縁までの距離yで除します。
断面係数Z=I/y
この断面係数の計算も、軸が図心を通る基本的な断面は公式化されています。

断面形状 縁までの距離 断面係数
長方形 y=D/2 Zx=bD^2/6
三角形 (上部) y=2D/3
(下部) y=D/3
(上部)Zx=bD^2/24
(下部)Zx=bD^2/12
円形 y=D/2 Zx=πD^3/32
表3 主な断面の断面係数

 複雑な断面の断面係数を求めるときは、まず断面2次モーメントを算出して合計し、最後に縁までの距離を除して求めます。直接、断面係数を加減算することはできません。

例6)ビルドHの断面係数を求める。断面は例5と同じ。

図6
図6 例6問題図

BH-500×250×12×25
例5より、Ix=79685cm4
軸から縁までの距離y=50/2=25cm
Z=79685/25=3187cm3
参考)断面係数を直接、加減算してしまうと……
Z=25×502/6−23.8×452/6=2384cm3
となります。これは、減算している欠損部分のyの取り方がビルドH本体部分と異なっているためで(縁までの距離を45/2=22.5で計算している)、以下のように計算しなおすと、
Z=25×502/6−(23.8×452/6)×22.5/25=3187cm3
と、正しい値が求められます。

§4 断面2次半径
 部材の材軸方向に圧縮力をかけた場合、座屈する恐れがあります。この座屈のしやすさを表したものが断面2次半径です。この値が大きいほど、座屈に対して抵抗力があります(座屈しにくい)。主に鉄骨造での部材計算時に使用します。記号はi(小文字のアイ)、単位は長さの1乗で表されます。
i=sqrt(I/A)
 i: 断面2次半径(cm)
 I: 断面2次モーメント(cm4
 A: 断面積(cm2
※断面2次モーメントIや断面係数Zは、強軸方向に曲げなどの応力がかかるために強軸方向の計算だけで済むことが多いのですが、断面2次半径では、弱軸方向の計算も重要になります。座屈は、横補剛などの条件が同じであれば、弱軸の方向に発生するためです。

例7)ビルドHの断面2次半径を求める。断面は例5と同じ。

図7
図7 例7問題図

BH-500×250×12×25
例5より、Ix=79685cm4
断面積は、
A=1.2×45+2×25×2.5=179cm2
ix=sqrt(79685/179)=21.10cm
参考)弱軸(Y軸)方向の断面2次半径を求める。
Iy=2×(2.5×253/12)+(45×1.23/12)
 =6517cm4
iy=sqrt(6517/179)=6.03cm

20120102

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建築構造online(旧「構造屋さん修行中」) author of this document かずぅ(kazuu)