2-7. 応力図2

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このページでは、単純梁につづいて片持ち梁の応力図の描き方を解説していきます。応力図は構造力学の基本的な知識で非常に大事なことなので、知っている人からするとくどいくらいの解説かもしれません。順を追ってページを見ていて、単純梁のページだけで応力図のことが理解出来た方は、このページを飛ばしても構わないと思います。

例1 片持ち梁に集中荷重が掛かった場合
ここでは、片持ち梁のページで反力の解説をした例を中心に応力図の描き方を示します。図1-1は片持ち梁の例1の問題の算定結果です。
[片持ち梁例1]
図1-1
図1-1(問題図)
1.N図を描く
N図とは軸方向力図のことです。軸方向力は、部材に真っ直ぐに掛かっている力のことですが、この例では水平力のHaが0なので、N図はありません。
 図1-2 N図
(N図なし)
図1-2 N図
2.Q図を描く
 Q図とは、せん断力図のことです。左側のA点から見ていくと、最初に垂直反力であるVaの3kNが上向きに掛かっています。左側が上向きのせん断力なのでプラスの荷重として表現されます。その後、C点において下向き3kNの荷重があるので差し引き0となり、その結果図1-3のようになります。
図1-3 Q図
図1-3 Q図
3.M図を描く
 M図とは、曲げモーメント図のことで、部材内の曲げモーメントの状態を示す応力図です。これはQ図とは逆に、先端であるB点から見てみましょう。
 B-C間は何も荷重はないので0のままです。C点には3kNの荷重があり、下向きの荷重ですので、モーメント図では上に跳ね上がります。これは前ページの「レ」の考え方と同じです。そのままA点まで一定の割合でモーメントの応力が増し、最大7.5kN・mになります。 単純梁の場合はローラー・ピン両支点ともにモーメント荷重を受けられないので必ず0になるのですが、片持ち梁の支点であるフィックス(固定端)はモーメント荷重を受けることができるので、通常はモーメントがある状態になります。この支点に残っているモーメントが、モーメント反力と必ず等しくなるのです。
 今回はQ図とは逆にB点の方から考えました。フィックスの場合、垂直反力とモーメント反力の2つの要因がモーメント図に影響し、ここからスタートするのは面倒なので、通常は自由端(B点)から考える方が楽です。ただし向きを間違えないようにしましょう。「レ」を想像し、上からの荷重の時右に跳ね上がるからといって、左の場合は下がるわけではないので注意しましょう。
図1-4 M図
図1-4 M図

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例2 片持ち梁に等分布荷重が掛かった場合
図2-1は片持ち梁の例2の問題の算定結果です。
[片持ち梁例2]
図2-1
図2-1(問題図)
1.N図を描く
この例では水平力のHaが0なので、N図はありません。
 図2-2 N図
(N図なし)
図2-2 N図
2.Q図を描く
 せん断力はA支点から見てきますと、まずは反力であるVaが上向き6kNありますので、最初に上向きに描きます。C点までは荷重はないので変化なく、C点から先は等分布荷重が掛かっているので徐々に下がっていき、B点で0になります。等分布荷重が掛かっている部分では、Q図の線は斜線になります。水平の線でないことは感覚でわかると思いますが、曲線でないことには注意が必要です。
図2-3 Q図
図2-3 Q図
3.M図を描く
 曲げモーメント図はB点から見ていきましょう。等分布荷重が上から掛かっているので上方向に線が出ます。モーメント荷重は荷重そのものがが変化しなくても距離のファクターがあるので増していきますが、等分布の場合は荷重そのものも増えているので、累進的な変化になります。よって図で表現すると、B-C間は離れていくにつれて勾配がきつくなる2次曲線になります。これはとても大事なことですので覚えておきましょう。
 C点からA点までは荷重はありませんので直線的な変化です。先ほども言いましたが、荷重がなくても距離のファクターによってモーメントは増していきますので、水平の線にはなりません。そして、A点でモーメント反力である12kN・mと釣り合う状態となります。
図2-4 M図
図2-4 M図
 M図を描くとき、特に間違えやすい形を2つほど紹介しましょう。よく一級建築士試験の構造の問題に出てくるような形だと思います。
 誤答例1は、モーメントは距離の影響を受けることを忘れ、A-C間を水平にしています。
 誤答例2は特に多い間違いですが、A-C間が変化していない上に、曲線の状態が逆になっています。B点から見たとき、等分布荷重のスタートが一番勾配がきつく、逆方向の荷重が掛かっているわけではないのに徐々に緩くなっているのは矛盾しています。この図の状態になるのは、B点に下向きの集中荷重があり、B-C間に上向きの等分布荷重があってC点でちょうどモーメントが釣り合ってしまう時です。 
 図2-5 誤答例1
図2-5 誤答例1
 図2-6 誤答例2
図2-6 誤答例2

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例3 片持ち梁に等変分布荷重が掛かった場合1
図3-1は片持ち梁の例3の問題の算定結果です。
[片持ち梁例3]
図3-1
図3-1(問題図)
1.N図を描く
この例では水平力のHaが0なので、N図はありません。
 図3-2 N図
(N図なし)
図3-2 N図
2.Q図を描く
 A点から見ていきます。まずは反力の4.5kNがあるので、せん断力図は上方向に出ます。下向きの等変分布荷重に押されるので、せん断力は徐々に減っていく状態になりますが、B点に近づくにつれて増していく等変分布荷重ですので、減り方が急になっていき、B点でちょうど0になります。結果として、図のような2次曲線になります。
図3-3 Q図
図3-3 Q図
3.M図を描く
 等変分布荷重のM図は難しいのですが、B点から見ていくと、0からスタートし徐々にモーメントが増していきます。
 今回のような等変分布荷重ですと、曲線の形をQ図のようにしてしまいそうですが、そうはなりません。荷重はB点が最大でA点に向かって緩くなっているのですが、モーメントは累積した荷重に距離を掛けていきます。つまりB点から1mの地点のモーメントを求めたい場合はB点から1mの範囲の荷重に対し距離を掛け、B点から2mの地点のモーメントは2mの部分まで荷重を考慮して計算します。
図3-4 M図
図3-4 M図
 ということは「B点からA点に向かって荷重の増加が緩やかになっている」だけであり、荷重そのものは増えているわけです。その上距離も長くなっていきますので、わずかながらM図の勾配はA点に向かって急になっていくことになるのです。A点でモーメント反力の9kN・mとなります。
 等変分布荷重のM図は3次曲線です。ここまでくるとお気づきの方もいるかもしれませんが、荷重→Q図→M図の順で、距離の次数が増えていくのが基本です(下表参照)。
これらの法則を知っておくと、Q図・M図を描くときに悩まずにすむことでしょう。
 
   荷重 Q図 M図
等分布 距離による
変化なし(一定)
 y=wL0 (L0=1)
直線的変化
 y=wL (=L1)
2次的変化
 y=wL2
等変分布 直線的変化
 y=wL1
2次的変化
 y=wL2
3次的変化
 y=wL3
次数変化 低→高

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例4 片持ち梁に等変分布荷重が掛かった場合2
図4-1は片持ち梁の例4の問題の算定結果です。
[片持ち梁例4]
図4-1
図4-1(問題図)
1.N図を描く
今回も水平荷重がありませんので、N図には何も表示されません。
 図4-2 N図
(N図なし)
図4-2 N図
2.Q図を描く
 A点から見ていくと、まずはいつものように支点反力の12kNが上に出てきます。全面に渡って一定の等分布荷重の時は直線になり、三角形状の等変分布の時はきれいな2次曲線になるQ図ですが、台形状の時はその2つの中間で、わずかな曲線になります。B点ではきちんと0になります。台形状の等変分布荷重だからといって、Q図の先端部にせん断が残るわけではありませんので注意してください。
図4-3 Q図
図4-3 Q図
3.M図を描く
 B点から見ていきます。三角形状の等変分布と違い先端部分から荷重が掛かっているので、最初からある程度の角度を持った曲線になります(図4-4では分かりづらいですが)。この辺りの形状は「こんなもんか」という程度の認識でいいと思います。もちろん、A支点ではモーメント反力と同じ大きさになります。
図4-4 M図
図4-4 M図

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例5 片持ち梁にモーメント荷重が掛かった場合
図5-1は片持ち梁の例5の問題の算定結果です。
[片持ち梁例5]
図5-1
図5-1(問題図)
1.N図を描く
 今回も水平荷重がありませんので、N図には何も表示されません。
 図5-2 N図
(N図なし)
図5-2 N図
2.Q図を描く
 今回は鉛直荷重もありません。よってQ図もありません。
図5-3 Q図
(Q図なし)
図5-3 Q図
3.M図を描く
 モーメント荷重の場合は、距離の影響を受けません。B点から見たとき、B-C間は何も無く、C点にあるモーメント荷重によって上方向に表示されます。そのまま大きさは変わらず、A支点まで行きます。
 ここで考え方の整理をしておきます。直接モーメント荷重が掛かっている場合上下のどちらの側にモーメント図を描けばいいかを簡単に知るには、荷重点より進行方向に行った側の矢印の向きを考えればいいのです。C点に掛かっているモーメント荷重は、その回転方向を指でなぞってみると、中心の左側では下から上にあがる軌跡になります。B点から左方向に向かって見ているのですから部材の上側に図を描けばいいのです。逆にA点から右側に向かって考えると、反力のRMaはA点の右側で上にあがる方向の回転になっていますので、やはり上側にあがり、C点の荷重は右側が下にさがる回転ですので下方向に移動し、大きさが反力と同じなので0になります。
図5-4 M図
図5-4 M図

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例6 変形片持ちラーメンの場合
図6-1は片持ち梁の例6の問題の算定結果です。
[片持ち梁例6]
図6-1
図6-1(問題図)
 ここで応力図を描く前に、下準備として力の分解をしておきましょう。というのも、軸応力図を考えるには部材に平行な力を把握し、せん断力図を考えるには部材に垂直な方向の力を把握しなければなりません。しかしB-C材から見れば、掛かっている荷重は斜めになっているので、力を2つに分ける必要があるのです。
 今回は右図のように力を分解します。一方はB-C部材と平行に、もう一方はせん断力図を描くためにB-C部材とは直角の方向に分解するので、分解された2つの力の間の角度は直角になります(図6-2)。 力の分解は、「力の平行四辺形」や「力の三角形」という考え方があります。単純梁の「例7 荷重が傾斜している場合」の例題でも取り上げていますが(ここを参照)、この問題は部材の傾斜角度を示していませんので、図式解法による「力の三角形」を考えてみましょう。
 B-C部材のB点に掛かっている荷重の作用線を図のように描きます(図6-3)。そして、分解するもう一方の線と同じ角度の線(B-C部材に対する垂線)をC点から描きます(図6-4)。この時当然どこかで先ほど描いた作用線との交点(d点)ができます。その部分以降の線をカットして三角形にします(図6-5)
 図6-2  図6-3
 図6-2 図6-3
これで何がわかるかというと、この三角形の各辺の長さが、分解した力の大きさの割合を表しているのです。B-dの線が荷重の4kNを示しており、その他の2つの線が分解した力の大きさを示しています。
 図6-1をご覧ください。B点から垂直に下ろしC点から水平に伸びる線を書いて三角形を作ると、底辺が1600で短辺が1200の三角形となり、斜辺の長さは
 root(1200^2+1600^2)=2000
となります(図6-6)。そのことを踏まえて図6-5に目を戻すと、B点の角度は図6-6のB点と等しく、C点の角度は直角で図6-6のe点の角度と等しいことが分かっていますので、図6-5と図6-6の三角形は相似形で、それぞれの辺の長さの比が等しくなります。そして斜辺が4kNを表しているのですから、
短辺であるB-Cの長さは
 4/2000×1200=2.4kN
底辺であるC-dの長さは
 4/2000×1600=3.2kN
という分解した荷重の大きさを表していることになります。結果として、力を分解した状態は図6-7のようになります。これで下準備が完了しました。 
 図6-4 図6-5
 図6-4 図6-5 
1.N図を描く
 さて、ようやく応力図作成です。
 まずN図ですが、B-C部材の軸方向力は、力の分解によって求めた部材に平行な2.4kNです。それが部材を押す方向(圧縮力)として掛かっているので、図のようになります。
 一方、柱にあたるC-A部材ですが、これは垂直に掛かっている4kNの荷重がそのまま圧縮力となりますので、この軸方向力は4kNです。2.4kNではないことに注意してください。なお、軸方向力は圧縮力がマイナスですので負号を付けます(図6-8)。 
 図6-6 図6-7 
 図6-6 図6-7
2.Q図を描く
 次はQ図です。B-C部材は分解した力のうち3.2kNがせん断力となります。この時、部材左側が上がる方向のせん断力ですので符号はプラスです。一方、C-A部材ではせん断力はなく0ですので図には何も表現されません。勢い余って3.2kNと描いてしまいそうですが、分解した力はB-C部材の応力図を描くためのもので、元々は4kNの垂直荷重しかないのですから、せん断力が存在しないのは当然のことと言えます。 
図6-8 N図   図6-9 Q図
図6-8 N図  図6-9 Q図 
3.M図を描く
 最後はM図ですが、これは分解した力で考える必要はありません。モーメントは部材と力の方向関係に影響されず、作用線とモーメントを求める点との距離で決まるので、4kNの垂直荷重だけを考えればいいのです。 C点で考えると、4kNの荷重の作用線から1600離れていますので、
 Mc=4×1.6=6.4kN・m
となります。A点では、作用線との距離はC点の時と変わらずその間に荷重が増えているわけでもないので、モーメントは変化しません。よってC-A間は一定となり、図6-10のようになります。
図6-10 M図
図6-10 M図 

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20111211

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建築構造online(旧「構造屋さん修行中」) author of this document かずぅ(kazuu)